’98時代

前編
 お兄ちゃんはごみ収集の仕事をして3年が経ち、相変わらず正吉君と富良野のアパートで暮らしていた。父さんは堆肥づくりや土地改良のための炭焼きづくりをし、完ちゃんの有機農法を支えていた。完ちゃんはチンタ君の兄で嫁のツヤ子ちゃんはチンタ君の元彼女だった。一方、牧場を継いだ草太兄ちゃんは近代的な牧場経営・大規模農業をしており、完ちゃんや父さんとは考えが違っていた。
 お兄ちゃんは上砂川のシュウちゃんの実家にあいさつに行った。そこには無口な父や兄姉らが揃っており、お兄ちゃんはすっかり委縮してしまった。やがてシュウちゃんは兄によって上砂川に連れ戻されてしまい、お兄ちゃんには不安しかなかった。
 雪子おばさんが離婚して富良野に戻ってきた。富良野に帰った私は久しぶりに雪子おばさんに会った。ヘソ祭りの日には喫茶店で正吉君とお兄ちゃんに会ったが、本当の事情を話すことはできなかった。その夜、私は草太兄ちゃんの牧場を訪ねた。私は黒木先生との子を妊娠しており、札幌で一人で生み育てるつもりであることを話した。その話を聞いた草太兄ちゃんは正吉君を呼び出し、螢と結婚しろと命じた。螢が一人で子供を産もうとしている、黒板家はお前の家族だと説得した。
 正吉君が札幌にやってきた。螢を訪ねプロポーズをするが、私はそれを受け入れられなかった。正吉君は母親のみどりさんから「百万本のバラ」の話を聞かされ、どこにでも咲くオオハンゴウソウを百万本摘んで私に贈った。
 盆休みの後、正吉君はお兄ちゃんに螢を妊娠させてしまったこと、結婚したいことを打ち明けた。翌日、お兄ちゃんと正吉君と私の3人は石の家に行き、正吉君が螢ちゃんと結婚させてくださいと父さんに話した。父さんは嬉しさのあまり声を上げて泣き、たちまちお祝いの大宴会となった。

 

後編
 秋になり、私は結婚式まで父さんと暮らすことにした。その頃、麓郷では螢の子が正吉君の子ではないという噂が流れていた。
 収穫を終えた頃、完ちゃんは借金で行き詰まっていた。深夜になっても戻らない完ちゃんを探し回ると、完ちゃんは廃屋で農薬を飲もうとしているところをチンタ君に保護されていた。
 シュウちゃんがお兄ちゃんに会いに来た。シュウちゃんはお兄ちゃんへの気持ちを書き綴ったノートを贈った。
 草太兄ちゃんはお兄ちゃんを呼び出し、臨時職員を辞めて牧場を手伝えと迫った。借金のカタに取った完次のトラクターを運ぶのを手伝えと言われたお兄ちゃんはこれを断り、草太兄ちゃんに激しく反発した。
 翌日、お兄ちゃんが雪子おばさんの店を訪れている時、草太兄ちゃんが事故で死んだという電話がかかってきた。草太兄ちゃんは一人でトラクターを運ぶ途中、誤ってその下敷きになってしまった。お兄ちゃんは草太兄ちゃんの手伝いを断ったせいだと自分を責めていた。
 時夫さんと広介君に呼び出されたお兄ちゃんは草太兄ちゃんが準備していた私と正ちゃんの盛大な結婚式の計画を聞かされた。
 結婚式の朝、花嫁衣装に身を包んだ私はかしこまって父さん、お兄ちゃん、雪子おばさんに挨拶をして石の家を後にした。
 富良野神社で結婚式を挙げ、北の峰の会館で披露宴が行われた。披露宴の最中、父さんはひたすら酒をあおるばかりだった。やがてアイコさんがスピーチに立つと、カセットテープに残されていた草太兄ちゃんのスピーチ練習の声が再生された。草太兄ちゃんとの思い出が蘇り、私も参列者のみんなも涙が止まらなかった。
 2次会の後、お兄ちゃんは酔いつぶれた父さんを抱えて石の家に帰った。お兄ちゃんは父さんの懐に何かが入っているのに気づいた。それは母さんの遺影だった。

 

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