連続第7回 電話

 12月半ば過ぎになると毎日雪はねをするんだよ。雪は重くて大変なんだ。
 雪子おばさんが東京に帰ってから、学校が終わると螢とお兄ちゃんとすみえちゃんで中畑のおじさんの家に行くことになったんだ。中畑さんちはテレビも電話もあるんだよ。勉強しないでテレビ見てたら、中畑のおばさんに叱られちゃった。勉強してたら電話もかかってきたよ。親戚のおじさんの家に赤ちゃんが生まれたみたい。中畑のおじさんが夜も電話してた。
 雪子おばさん、どうしたかな。クリスマスまでに帰るかな。おばさんいないと草太兄ちゃんも来ないし。螢はきっとさ、おばさんもう富良野に帰らないと思うんだ。お兄ちゃんはそのとき何を考えていたのかな?
 山仕事の終わった日には、山子さんや家族の慰労会があったんだ。みんなでお酒を飲んだり、歌を歌ったりして楽しかったよ。山仕事が終わった翌朝から父さんは森に入って何かひとりでやり出したよ。父さんなにしてるのかな。
 中畑さんのお家には大きなクリスマスツリーがあるんだよ。螢とお兄ちゃんとすみえちゃんで飾りつけをしたんだ。そしたら中畑のおじさんが来て、お兄ちゃんに父さんの手伝いに行こうって。お兄ちゃんは断っちゃったけど。螢も飾り付けに夢中だったけど、父さん森の中で何してるのかな。手伝わなくていいのかな。そしたら急にお兄ちゃんが中畑さんの事務所に来いって。なんだろうと思ったけど電話に出てみなっていうから電話に出たんだ・・・。そしたら母さんの声が聞こえてきて、螢びっくりしてなにも言えなかったよ。走って家を飛び出しちゃった。お兄ちゃんは螢を喜ばそうとしてくれたみたいだけどね。
 冬休み前、最後の学校の日、父さんは凉子先生とお話ししてたみたい。螢は子ども5人で校庭で遊んで待ってたんだ。父さんが出てきて一緒に帰ろうと思ってたんだけど。お兄ちゃんが中畑さんちでクリスマスしたいって。螢は父さんと一緒に帰りたかったんだけど父さんも行ってきなって言うから、お兄ちゃんと中畑さんちに行くことにしたんだ。
 中畑さんちではクリスマスの準備ができてテレビを観てたんだ。そしたら中畑のおじさんが家まで送っていくよって。クリスマスは自分の家でやるもんだって。おじさんの言うとおりだよね。父さん一人じゃかわいそうだよね。お兄ちゃん、帰ろう。
 家に着いたとき中畑のおじさんがお兄ちゃんに言ったこと忘れられないな。母さんがいなくてさみしいのは父さんも一緒だよね。それに毎日父さんが夜起きて、ストーブに薪を入れてるの知らなかった。父さんごめんなさい、そしてありがとう。家に帰ったら螢とお兄ちゃんのスキーが並んでたよ。父さんからのクリスマスプレゼントだ!
 夜寝る前、螢、父さんに謝ったんだ。内緒で母さんに電話かけたんだ。学校の電話でこっそりかけたんだ。ごめんなさい。父さんはよかったなって、母さん喜んでるだろうって言ってたけど・・・。

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