連続第16回 転校

 父さんと一緒にもう一度、橋に行ったんだ。中畑のおじさんとおばさん、清吉おじさんとおばさんも来てた。おまわりさんも来ていろいろ調べてたみたい。
 正吉君のおじいちゃんのお葬式の準備が始まったみたいだけど、螢とお兄ちゃんはいつもどうり学校に行った。正吉君は休んでたけど。学校の帰り中川のおじさんに話しかけられた。正吉見なかったかって。正吉君、家にいないみたいだから螢とお兄ちゃんも一緒に探したんだ。正吉君の家の前で父さんや凉子先生とも一緒になったんだ。あー!もしかしたらあそこかも?螢とお兄ちゃんと凉子先生の3人で秘密の場所に行ったんだ。木の上の家に正吉君いるよ。凉子先生が上にあがって正吉君に話しかけたんだ。その晩の通夜に父さんは行ったんだ。
 螢とお兄ちゃんは家で留守番してたんだ。お兄ちゃんは木の上の家のことどうして知ってたのかって。前におじいちゃんが連れて行ってくれたんだ。寂しいとき一人で来て泣けって。
 次の日、おじいちゃんのお葬式があった。子どもたちはみんなで外で遊んでたんだ。お兄ちゃんと正吉君は少し話してた。お兄ちゃんはお葬式での清吉おじさんの言ったことが忘れられなかったみたい。みんなが正吉君のおじいちゃんの気持ちを忘れてるって、馬だけがわかってるって、清吉おじさん言ってたみたい。螢とお兄ちゃんは辰巳のおじさんの車で先に帰ってたんだ。
 次の日、螢とお兄ちゃんが学校に行く前、父さんが教えてくれたんだ。丸太小屋を建てるって。やったね。小さいけど楽しい家を作ろうって父さんが言ってた。これから3人で設計するって、螢も考えるよ。いってきまーす!
 父さんとお兄ちゃんと3人で畑作業をしてたら、正吉君と母さんが来たんだ。5人でご飯食べることになったんだ。正吉君の母さんが材料持ってきて作ってくれるって。ご飯を食べた後、父さんと正吉君の母さんはお酒を飲み始めた。螢とお兄ちゃんと正吉君は外に遊びに行ったんだ。その後2人は家に帰ったんだ。
 だけど、次の日もその次の日も正吉君は学校に来なかったんだ。何日か経って授業の後、凉子先生が「正吉君が学校をやめました」って教えてくれた。「みんなにさよなら言いたかったんだけど言えないで行っちゃうからごめんなさい」って正吉君が言ってたみたい。学校の帰り、お兄ちゃんと正吉君の家に行ったら、玄関に木が打ち付けてあった。家の裏に回ったら清吉おじさんが立ってた。「麓郷にまた一つ廃屋がふえた」って清吉おじさんが言ってた。また3人で一緒に遊びたかったな。
 お兄ちゃん、早く早く。大根の種が芽を出したよ。お兄ちゃん、わくわくしたね。その夜、中畑のおじさんと熊さんと中川のおじさんが来て、丸太小屋の話をしたんだ。家の大きさや作り方を相談してたよ。それから父さんはみんなに説明しながら、小さな丸太小屋の模型を作ったんだ。それは小さいけど夢みたいな家だったね。

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