『北の国から’95 秘密~』の小沼シュウ(演:宮沢りえさん)、『大都会―闘いの日々―』第8話「俺の愛した、ちあきなおみ」の木下マヤ(演:高橋洋子さん)。時代は違いますが、北海道の炭鉱の町から上京し、都会で”性の搾取”に傷つけられ、それぞれの人生を歩む2人の少女の物語です。
今回は『北の国から』ファンの皆さんと『大都会―闘いの日々―』の感動を共有したいと思い、小沼シュウと木下マヤの人生に焦点をあててみました。
①出発点の共通性
小沼シュウと木下マヤは、ともに北海道の疲弊した炭鉱の町(シュウは上砂川・マヤは美唄)から東京へ上京します。


そこには共通して、
・地方の貧困
・先の見えない閉塞感
・「ここでは生きられない」という切実さ
があります。
ただし違うのは上京の目的です。
◇シュウは夢を叶えるために東京へ行ったのではなく、「生きるために生活のために」東京に行った少女です。
◇マヤは「歌手になる」という夢をもち、東京を「夢を実現する場」として選んだ少女です。
②「性」の搾取
2人とも東京で「性」の搾取にさらされます。しかし、その描かれ方は対照的です。
◇小沼シュウ
・経済的困窮
・悪い大人に騙されアダルトビデオに出演

シュウのアダルトビデオ出演は、社会の底辺で生きる少女の“ありふれた悲劇”として描かれます。その事実をシュウは【過去】の出来事として、北時計で純への手紙を読みあげ告白します。
◇木下マヤ
・芸能界(マネージャー・大物作曲家・テレビ局)
・夢を人質にした性接待の強要
・抵抗の末の殺人

マヤの場合、性搾取は芸能界という世界の暴力として、露骨に劇的に描かれます。マネージャーの平山から「和崎先生に逆らっていいのか。この世界でやっていけなくなるぞ」「誰のおかげで明日テレビに出られるンだ」とテレビ出演の見返りに、大物作曲家の和崎への性接待を強要されます。そしてマヤはマネージャーの平山を殺してしまったことを含め、すべてを【現在】の出来事としてテレビの生放送で告白します。
③ 男性の存在
2人の少女の運命を分けたのは周囲の男性の存在です。
◇シュウには「黒板純」がいた

純はシュウの過去を知った当初、動揺し取り乱し、決して冷静な対応はできませんでした。しかし最後には、
「今度の日曜、山部山麓デパートに行かないか」
と不器用だがシュウを本気で受けいれる態度を示します。シュウの過去を「なかったこと」にもしないし「責めること」もしないが、ただ「これからも一緒にいる」という選択をしました。
◇マヤには「村田栄ニ」がいたが…

栄ニはマヤと同郷の北海道美唄出身です。栄ニの応援と優しさがあり、ここまで来れたとマヤは話してます。
しかし、東京でマヤの周囲にいる男性は、
・元暴力団組員のマネージャー平山
・欲望を持つ大物作曲家の和崎
だったのです。
栄ニの力ではこれらの男たちからマヤを守ることはできなかったのです。
④ 「山部山麓デパート」と「喝采」
◇シュウの物語の象徴ー「山部山麓デパート」でのささやかなデート

純「今度の日曜、山部山麓デパートに行かないか」は北の国から’95秘密の象徴的な台詞だと思います。
「山部山麓デパート」は夢や成功の象徴ではありませんが、ささやかな幸せの象徴ではないでしょうか?
◇マヤの物語の象徴ーちあきなおみの「喝采」

マヤは栄ニが申し込んだ江別ののど自慢大会でちあきなおみの「喝采」を歌いました。「喝采」はマヤの歌手になるという夢を後押しした歌でした。
しかし実際には、マヤがテレビの生放送で性接待のことやマネージャーの平山を殺したことを告白した時、
【マヤの告白を消すためのBGM】
としてテレビ局は「喝采」を流します。
ここにこの物語の悲しさが凝縮していると感じました。
◇シュウの告白は「純に受け入れられた」
◇マヤの告白は「テレビ局によって消された」
「山部山麓デパート」というささやかな幸せを手に入れたシュウ。
「喝采」で告白が消され、そして集まってきた警察に囲まれるマヤ。
北海道の炭鉱の町から東京へ上京した2人の少女の物語でした。
長文を最後までお読みいただきありがとうございました。
【関連ページ】
大都会ー闘いの日々ー
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