倉本聰先生は、本当に言いたい「文明社会に対する疑問」という苦みの薬の部分を甘い砂糖で固めて飲ませる「糖衣錠作戦」によって「北の国から」の企画書を通したとおっしゃっています。
一方、「大都会ー闘いの日々ー」全31話を見終えて思ったのは、「糖衣錠」に包まず倉本先生の思いが直接伝わってくる作品だということです。「糖衣錠」に包んでいないので、視聴後の後味が悪くスッキリしないと感じるかもしれません。
特筆すべきは、第8話「俺の愛したちあきなおみ」ではテレビ業界の「枕営業・性加害問題」がテーマとなり、現在のドラマでは取り扱うことが難しい内容が描かれていることです。創作の源は「怒りのパッション」とおっしゃる倉本先生にしか書くことができない傑作回だと思いました。エンディングで流れるちあきなおみさんの「喝采」を聴いたときは、3年B組金八先生で流れた中島みゆきさんの「世情」と並ぶ衝撃を受けました。
皆さまにもぜひ観ていただきたいと思い、北の国からと関連させながら内容を紹介します。
まずは全話通して出演していて北の国からにも出ている4人の俳優さんです。
◇草薙幸二郎さんー高木吾一刑事
・テレビのワイドショーの竹上教授(北の国から連続ドラマ第20回)

◇小野武彦さんー大内正刑事
・葬式のベテランの小山さん(北の国から連続ドラマ第23回)

◇粟津號さんー平原春夫刑事
・純と正吉から事情聴取した今井巡査(北の国から’84夏)

◇平泉征(平泉成)さんー新聞記者の大久保
・スナックの客(北の国から’98時代)

各話のストーリーの紹介です。
第1話ー妹ー(倉本聰脚本)
黒岩刑事(渡哲也さん)と同居する妹の恵子(仁科明子さん)の過去のことを紹介する回。
容疑者(石橋蓮司さん)逮捕のために関係のない義理の妹(水沢アキさん)の幸せも奪ってしまう。
第2話ー直子ー(倉本聰脚本)
謎の女直子(篠ヒロコさん)が恋人の久光(伊吹吾郎さん)に騙され、ヤクザに乱暴されているところをブルーフィルムに撮られてしまう。直子の謎は最終話で明らかになる。
第3話ー身がわりー
身代わりで殺人事件の犯人として逮捕された森田(渡辺篤史さん)が出所し暴力団幹部に復讐をする。
第4話ー協力者ー(倉本聰脚本)
捜査に協力した情報屋の松宮(小鹿番さん)が殺され、弟の次郎(松田優作さん)が犯人を探しまわる。北の国からで向田の妻を演じた岡本麗さんが娼婦役で出演、松田優作さんとの濡れ場あり。

第5話ーめぐり逢いー
黒岩刑事(渡哲也)は、暴力団員の小野田(蟹江敬三)の情婦(宮下順子)に「貧乏でお腹を空かせた学生」だと勘違いされ食事をご馳走になった。黒岩刑事(渡哲也)は勘違いを受けたまま情婦(宮下順子)の家に小野田(蟹江敬三)と行くことになった。そのことが小野田の逮捕の決定打となった。
蟹江敬三さんは、北の国からに草太を取り調べた刑事役で出演している。

第6話ーちんぴらー
ちんぴらの坂井(林ゆたかさん)が酔っ払って拳銃を発砲したのはやくざを殺す計画から逃げるためだった。その彼女(浅田美代子さん)の証言からわざと逮捕されたということが分かる。
第7話ーおんなの殺意ー
抗争相手の組長を刺殺した沢井(岡崎二朗さん)は8年の刑期を終え出所する。沢井は出所時に見かけた女(赤座美代子さん)に乱暴をする。その後、沢井は女に付きまとうが、女も寂しさから沢井を受け入れてしまう。
第8話ー俺の愛したちあきなおみー(倉本聰脚本)
木下マヤ(高橋洋子さん)は北海道の美唄から上京し歌手を目指していた。マヤは事務所の社長に大物作曲家への枕営業を強要され殺人を犯してしまう。マヤは大物作曲家の力でテレビ番組に出演することになっていた。放送当日、マヤはテレビ番組の生放送で人を殺したことを告白する。慌てるテレビ局のスタッフたち。テレビ局に集まる多くの刑事。マヤの告白は途中で消され、代わりにちあきなおみの「喝采」が流れてくる。「喝采」はマヤが好きな歌で上京のきっかけとなった曲だった。
第9話ー解散ー
暴力団の幹部・村井哲夫(青木義郎さん)が刺客に襲われる。元刑事でもある村井がやくざの世界で生きる覚悟と苦悩が描かれている。若い衆の自立の資金を得るため組を売却することを決意する。
第10話ー憎しみの夜にー
ホステスのみずえ(内田あかりさん)はヤクザに付きまとわれている。直子(篠ヒロコさん)は自分が受けた経験と重ね、自分も同じ憎しみを抱いていたと静かに語る。
第11話ー大安ー(倉本聰脚本)
やくざの組長(内田朝雄さん)の娘の結婚式をめぐる話。罪のない家族の結婚式の開催の是非、一般人への影響、マスコミの取材のあり方を問う非常に奥の深い問題作。最後に事件が起きる刑事ドラマという点でも異色の回。

第12話ー女ごころー
丸山刑事(高品格さん)が以前逮捕した女(中尾ミエさん)が夫の木元(森次晃嗣さん)が拳銃を持っているとタレこんできた。捜査が進むにつれ、夫を思う女ごころが変わっていく。
第13話ー再会ー
大阪の暴力団員の山岡(石橋蓮司さん)が東京で殺人事件を起こす。大阪府警の三沢刑事(藤岡琢也さん)が東京にやってくる。三沢刑事は黒岩刑事(渡哲也さん)の奈良時代の上司であるが、黒岩刑事は深町課長(佐藤慶さん)からの指示と上司への恩で葛藤する。
第14話ーもう一人の女ー
覚醒剤を密造中に爆発事件が起きる。その事件に関わる2人の男の奥さんと妹に焦点をあてた話。
第15話ー前科者ー(倉本聰脚本)
真面目に働いているのに前科者のため警察に事件との関与を疑われる津山順吉を室田日出男さんが演じている。室田日出男さんは北の国から’98時代でシュウの父親を演じている。

東京都衛生局公衆衛生部防疫課の医師で丸山刑事の友人でもある白川を坂本長利さんが演じている。坂本長利さんは北の国から’87初恋でれいちゃんの父親である大里政吉を演じている。

東京都衛生局公衆衛生部防疫課の課長を武内文平さん(五藤雅博さん)が演じている。武内文平さん(五藤雅博さん)は北の国から連続ドラマ第16回で杵次の息子の笠松公介を演じている。
※大都会ー闘いの日々ーには五藤雅博、北の国からには武内文平の名前で出演している。

第16話ー私生活ー
事件解決のために警察やマスコミから私生活を暴かれる中学校教師の稲村紀子先生をいしだあゆみさんが演じている。稲村先生の「あなた方はいつも正しいんですね。私にはその正しさが耐えられません。」が印象に残る。


第17話ー約束ー
借金で脅されている飲み屋に現われた前島(高橋悦史さん)をメインにした話。前島は自分は暴力団の若衆頭と嘘をついているが、弱い人間を助ける自分に酔っているように見える。パロディ要素が垣間見える回。

第18話ー少年ー(倉本聰脚本)
公園で恵子(仁科明子さん)を待ち自分の詩を読んでほしいと言う少年の話。一方、名門中学校の教師が自殺した事件には裏口入学を斡旋する暴力団が絡んでいた。少年は自分の実力を信じず裏口入学を画策する親に反発し、自分の気持ちを詩で表現した。
第19話ー受難ー
経営コンサルタントを名乗るやくざが銀行のコンピュータミスから不渡りを出した玩具製作所をダシに銀行をゆする。銀行の支店長秘書(丘みつ子さん)はそのことを匿名で警察に密告する。
第20話ー週末ー(倉本聰脚本)
直子(篠ヒロコさん)が映っているブルーフィルムがあるとの情報を受け、黒岩刑事(渡哲也さん)と丸山刑事(高品格さん)が有休を取って熱海に行く。
第21話ースクープー
暴力団の幹部(睦五郎さん)が鉄砲玉の男に撃たれて重傷を負う。東洋新聞の日高記者(寺尾聡さん)のアパートにかくまい、スクープ記事のため暴力団の内幕を聞き出す。
第22話ースターー
ラジオDJのユキ(佐野厚子さん)には自分のせいでやくざの世界に足を踏み入れてしまった兄(高橋長英さん)がいた。兄が組から横領した金でDJに選ばれたことからトラブルに巻き込まれていく。
第23話ー山谷ブルースー(倉本聰脚本)
暴力団若衆頭の秋葉(志賀勝さん)は亡くなったチンピラの遺体を引き取り葬儀を開こうとする。秋葉は香典を資金源にしようとする組と対峙しながらも、命がけで香典を母親に届ける。
第24話ー急行十和田2号ー
少女買春・人身売買の話。スケコマシのイナケン(川谷拓三さん)は「急行十和田2号」に乗る水沢初代(坂口良子さん)を上野駅に迎えに行く。伊香保温泉に売ることになるが、情を持ったイナケンは初代をわざと取り逃がす。最後は悲しい結末。
第25話ーアバンチュールー
石原裕次郎さんの主役回。滝川キャップ(石原裕次郎さん)が薬物の運び屋の女(木の実ナナさん)をドライブに誘い海に向かう。
第26話ー顔ー
平原刑事(粟津號さん)は嘘をついていない「顔」だと信じていた容疑者の女・中原令子(内藤杏子さん)に嘘をつかれ、女というものがわからなくなる。一方、平原刑事(粟津號さん)は同郷の女性(四方正美さん)との結婚を考えていたが、彼女の顔なら信じられると両親に会うことを決意する。

第27話ー雨だれー(倉本聰脚本)
暴力団員4人を射殺した組員の大江清(柴田侊彦さん)がショットガンを持ったまま団地に逃げ込んだ。大江が服役中、妹は組員に乱暴されトルコに売られていたことで事件が起きた。妹の自殺を知った大江は梶(吉原正治さん)という幹部を狙っていた。大江は主婦(稲野和子さん)を人質にとって団地の一室に立てこもった。団地での大規模なロケーション、タイトルにもなったショパンの「雨だれ」が印象に残る。

団地の主婦を泉よし子さんが演じている(右端)。泉よし子さんは北の国から連続ドラマ第7回で山仕事の慰労会の準備をする主婦を演じている。
第28話ー不法侵入ー
チンピラ(大門正明さん)の事件とトルコで働く女(伊佐山ひろ子さん)との事件とが並行して別々に進行する。麻薬中毒の女を演じる伊佐山ひろ子さんの迫真の演技も注目の回。

伊佐山ひろ子さんは北の国から’84夏でラーメン屋の店員を演じている。
第29話ー恵子ー(倉本聰脚本)
黒岩刑事(渡哲也さん)の妹の恵子(仁科明子さん)と九条記者(神田正輝さん)との別れを描く。
第30話ー縁談ー(倉本聰脚本)
黒岩刑事(渡哲也さん)は事務員の英子(新井春美さん)から好意を寄せられており縁談話が持ち上がる。一方、黒岩刑事(渡哲也さん)は謎の女、直子(篠ヒロコさん)に結婚を申し込むが、大物フィクサー桂木(山内明さん)の情婦であることを知ってしまう。
第31話ー別れー(倉本聰脚本)
直子(篠ヒロコさん)は大物フィクサーの桂木(山内明さん)との関係を絶ち、黒岩刑事(渡哲也さん)と結婚しようとする。桂木は直子が警察と内通していることを知り、香港へ逃亡しようとする。直子は黒岩刑事に桂木の情婦だったことを知られたと悟り、黒岩刑事への思いを捨て桂木と共に出国する。
【関連ページ】
大都会ー闘いの日々ー
https://kitanokunikara.blog/daitokai-tatakainohibi/


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